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2006年02月05日

素直なこころ

素直なこころとはいったいどのようなものだろうか。そのようなことを常々考えていた時期があります。素直に自分の気持ちを相手に伝え、そして相手の気持ちも素直に受け止める。このようなことが自然にできれば、どれだけ人間関係が楽になるだろうか。今から2年ほど前、ある光景を目にして「素直なこころ」について考えたことがあります。

冬の寒いとある日、家から歩いて約15分くらいのところにある緑地公園まで散歩に行った。その緑地公園に向かって歩いている途中、若いカップルがそれぞれ自転車を押して二人並んで歩いている姿を目にしました。二人はおそらく高校生くらいではないかと思います。わたしは二人についてそれほど気にすることなくただブラブラと歩いていたのですが、突然ふたりは立ち止まり、なにやら短い会話を交わしたあと女の子が男の子のほっぺにキスをし、女の子はサッと自転車にまたがり、男の子に向かって「バイバーイ!」と声をかけつつ勢いよく自転車をこいで走り出しました。男の子はというと、きっと予期せぬ出来事に少々とまどったのでしょう。しばらく立ち止まったままその場で固まっていました。しかしその子も急いで自転車にまたがり勢いよく女の子を追いかけはじめたのです。やがて二人の姿はわたしの視界から消え、その様子を遠くから眺めていたわたしは二人の素直な姿を見たことでなんとも言えない微笑ましい気持ちになったものです。

「もしわたしがあの男の子の立場だったとしたら、いったいどうしていただろうか?」

ふとなにげにそのようなことを考えました。もしかすると「彼女は俺をおちょくっているに違いない」と否定的に受け止めていたかも知れない。はたまた、嬉しさ半分・恥ずかしさ半分といった微妙な心理状態から彼女に向かって「なにをすんねん!」と怒鳴っていたかも知れない。そんなことを考えていると「オレって素直じゃないな・・・」と思わず苦笑してしまいました。いったいいつごろから「素直なこころ」を置いてきてしまったんだろう。

子供の頃の自分を振り返ってみました。小さな頃はなんでも動く物に興味を示し、触ったり手で叩いたりしてた。きっと子供ならみんなそうしていたに違いありません。面白いものを見たり聞いたりするとおもいっきり笑ったり、マンガやドラマの悲しいシーンでは涙を流したりもした。近所の友達と会えば追いかけあったり、いろんな遊び方を工夫して楽しんでいたはず。しかし、なにかに触ろうとすると「触ったらあかん!」。大きな声で笑ったり涙を流したりすると「男のくせにヘラヘラするな!」「メソメソ泣くな!」。友達と遊んでいると「あそこの子と遊んだらあかん!」。そんな感じで何をやっても「だめ!」と言われていたように思います。子供はいたって素直。理由もなくただ「だめ!」と言われたことを全て受け容れてしまう。というか受け容れざるを得ないのです。そうやって年齢を重ねるうちに興味を示すことが減ってしまい、人前で屈託なく笑ったり泣いたりすることも少なくなったのかも知れません。

このように、わたしの心には「だめ」がいっぱいありました。あげくに「わたしは何をやってもダメなんだ」と自分に否定的なレッテルを無意識の領域に知らず知らず貼ってしまったのでしょう。その「だめ」が自分の中にある「素直なこころ」を抑圧し、包み隠し、自分自身をしばりつけ、そして「いい人」を演じ続けながら今まで「見せかけの大人」として一生懸命に生きてきた。それはまさしく、サナギからふ化していないのに「わたしは蝶だ」と言っているようなもの。今では少しずつ心の中にひそむ「だめ」に気づくようになり、そして「もう大人なんだから大丈夫」「やればできるんだ」と肯定的なメッセージに書き換えるようにしています。

いまの世の中、子供のころにこのような経験をたくさんの人がしてきたと思う。わたしは今、とあるカウンセリング教室で講師として、トレーナーとしてたくさんの人と接しているわけですが、わたしと同じく自分の気持ちを素直に表現できず苦しんでいる人が多い。こころの中は人それぞれに異なりますが、子供のころの体験が大人になっても尾を引き、それがその人の人生を決めてしまっているように思えます。

いまいちど素直だったあの頃に戻ってみよう。
自分で自分をしっかり支え、肯定的に受け止めよう。
そして、サナギからふ化して立派な「大人の蝶」として羽ばたこう。

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